2割特例が終わった後、個人事業主が取れる選択肢は4つあります。
「終わったらすぐ負担増」ではありません。3割特例という段階的な移行措置もあります。
この記事では、4つの選択肢の全体像と「あなたはどれを選ぶべきか」の地図を示します。各制度の詳細は専門記事へのリンクで案内します。
そもそも2割特例はいつ終わる?
個人事業主(暦年課税)の場合、2割特例が使える最後の課税期間は令和8年(2026年)1月1日〜12月31日分です。
最後に2割特例を使った確定申告は2027年2月〜3月に行います。
よく見かける「2026年10月で終わり」という表記は個人事業主には当てはまりません。2026年10月時点では2割特例の利用に変化はなく、令和8年分は12月末まで有効です。
終了時期の詳細は → 2割特例はいつまで使える?個人事業主の最終申告と期限を確認
2割特例の後の選択肢は4つ
令和8年分を最後に2割特例が終わると、その後どうするかを選ぶ必要があります。大きな選択肢は以下の4つです。
| 選択肢 | 対象 | 特徴 | 向く人 |
|---|---|---|---|
| ①免税事業者に戻る(登録取消) | 登録取消後の課税期間 | 消費税の納税義務がなくなる。ただし取引先(買い手)の仕入税額控除に影響が出る場合がある | 売上が課税売上1,000万円以下で、取引先が免税事業者からの仕入れを許容している場合 |
| ②3割特例(個人のみ・届出不要) | 個人事業主・令和9年分〜令和10年分 | 納付税額を売上税額の3割に抑えられる。届出不要で適用可能。法人は対象外 | 令和9年・10年分の課税期間に該当する個人事業主で、引き続き登録事業者を維持したい人 |
| ③簡易課税 | 前々年課税売上5,000万円以下の事業者 | みなし仕入率を使って税額計算を簡略化。事前届出・2年継続適用が必要 | 業種ごとのみなし仕入率が実際の経費率より高くなる場合(経費が少ない業種など) |
| ④本則課税(原則課税) | すべての課税事業者 | 実際の仕入・経費から仕入税額控除を計算。経費が多い業種では還付になるケースも | 経費率が高い、または設備投資・仕入れが多い事業者 |
※税制・要件は変更される場合があります。最新は国税庁の令和8年度税制改正特集でご確認ください。
3割特例と簡易課税はどっちが得?
令和9年・10年分の個人事業主にとって、実質的な比較は「3割特例か簡易課税か」になるケースが多くなります。
結論の方向性だけ整理すると:
- 3割特例は届出不要で適用でき、手続きの手間がかかりません
- 簡易課税は業種のみなし仕入率しだいで有利不利が変わります
- 簡易課税は2年継続適用が原則のため、途中変更ができません
- 令和9年・10年分のどちらが有利かは、業種と売上規模によって異なります
詳しい比較・試算の考え方 → 3割特例と簡易課税はどっちが得?比較と選び方
簡易課税の届出・みなし仕入率の詳細 → 簡易課税とは?届出期限・みなし仕入率をわかりやすく解説
タイプ別:あなたはどれを選ぶ?
状況ごとに考え方を整理します。税務判断は個別事情によって異なるため、以下はあくまで検討の出発点です。
- 取引先がBtoC中心で、インボイス登録を継続する必要性が低い
→ 登録取消(免税に戻る)を検討する余地があります。ただし取引先との交渉や価格への影響を確認してください。 - BtoB取引が多く、取引先からインボイスを求められている
→ 登録事業者を維持する方向で、②〜④から選ぶことになります。 - 令和9年・10年分で手続きの手間を最小化したい
→ 届出不要の3割特例が最もシンプルです。簡易課税や本則課税より手続きが少なく済みます。 - 経費・仕入れが少ない業種(第一種・第二種:卸売・小売、第五種:サービス業など)
→ 簡易課税のみなし仕入率が有利になるかどうかを業種別に確認します。 - 設備投資が大きい、または仕入れが多い業種
→ 本則課税で実際の仕入税額控除を使う方が有利になる場合があります。還付になるケースも検討に値します。 - 令和11年分以降(3割特例が終わった後)を見据えている
→ 令和11年分以降は3割特例が使えないため、簡易課税か本則課税の継続的な判断が必要になります。早めに自分の事業の経費率・業種区分を把握しておくと判断しやすくなります。
判断を間違えないための注意点
以下の点は特に混同・見落としが多いポイントです。
届出期限に間に合わなくなる
簡易課税は適用したい課税期間が始まる前日までに届出が必要です(原則)。令和9年分(2027年1月〜)から適用したい場合は、2026年12月31日までに届出が必要です。期限を過ぎると翌年以降の適用になります。
簡易課税の2年縛り
簡易課税を選ぶと、2年間は変更できません(2年継続適用の原則)。「今年は簡易課税、来年は本則に戻したい」とはすぐにはいきません。選ぶ前に複数年の見通しを立てることが重要です。
「買い手側の経過措置」と混同しない
2割特例・3割特例は売り手(小規模事業者)の計算特例です。一方、免税事業者等からの仕入れに対する仕入税額控除の経過措置は買い手側の制度で別物です。
参考までに現行の買い手側経過措置の控除割合は以下のとおりです(令和8年度改正後):
- 〜令和8年9月:80%控除
- 令和8年10月〜令和10年9月:70%控除(2026年10月から変わるのはこちら)
- 令和10年10月〜令和12年9月:50%控除
- 令和12年10月〜令和13年9月:30%控除
- 令和13年10月〜:0%控除
売り手の2割特例・3割特例とは適用対象も仕組みも異なります。混同しないようご注意ください。最新・正確な数字は国税庁Q&A問113でご確認ください。
申告・税額計算を楽にする会計ソフト
簡易課税・本則課税・3割特例のいずれを選ぶにしても、消費税の申告作業は手計算では煩雑です。会計ソフトを使うと、課税売上・仕入れの区分集計から申告書の作成まで対応できます。
個人事業主向けのシェアが高い2サービスを挙げます:
- freee会計:インボイス・消費税申告に対応。クラウド型で銀行連携やレシート取込もできます。
→ freee会計の公式サイトを見る - マネーフォワード クラウド確定申告:消費税申告・簡易課税の切り替えにも対応。他のMFサービスとの連携が強みです。
→ マネーフォワード クラウドの公式サイトを見る
2サービスの機能・料金の比較 → freee vs マネーフォワード比較|個人事業主はどちらを選ぶ?
確定申告の全体的な進め方 → 確定申告のやり方|個人事業主向け手順まとめ
まとめ:4つの選択肢の地図
2割特例が終わった後の選択肢を再整理します。
- ①免税事業者に戻る:インボイス登録を取消。取引先との関係・影響を要確認
- ②3割特例(令和9・10年分・個人のみ):届出不要・負担を段階的に抑えられる移行措置
- ③簡易課税:事前届出・2年縛りあり。業種のみなし仕入率が有利かどうかで判断
- ④本則課税:実経費で控除計算。経費・仕入れが多い業種に向く
どれが最も有利かは、業種・売上規模・経費率・取引先の状況によって変わります。この記事で示したのはあくまで考え方の地図です。
具体的な税額・届出判断については、国税庁の公式情報や税理士に確認することをおすすめします。税制は改正されることがあるため、最新情報は必ず一次ソースでご確認ください。
最終確認:2026年6月(国税庁・令和8年度税制改正情報をもとに作成)
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